神奈川県山北町の山奥には、「八丁神縄林道」(全長約7.6キロ)という林道がある。約20年もの工期と25億3700万円の税金を費やして、2014年に開通した。しかし、開通からわずか5年後、2019年10月の台風で大きく崩れて一部区間は今も車両通行が不能のまま。
特に崩落が激しい約2キロの道のりを歩くと、見るも無惨に崩れたコンクリートの排水施設と落石の山々が現れる。
この道を歩く度、コンクリートで自然を制圧できると想定する、神奈川県の森林行政の甘さが見えてくる。
破壊されたコンクリートの構造物
「八丁神縄林道」の崩落場所は以下のGoogleマップの通り。
拡大するとこの区間。
林道の東側から進むと、山肌がえぐられたため宙に浮いてしまった排水施設が姿を現した。
さらに進むと、こちらも無残に崩落した排水施設と落石の山。
林道の至る所で土砂が道を塞いでいる。
↓の写真の左下には新たなクラック。崩落は今も続いている。
土砂とともに木々もなぎ倒されている。
人口構造物は見るも無惨な姿に。
自然環境への配慮??
山に道をつける際、さまざまな要因に気を配らなければならない。その大事な要素の一つに雨水をいかに流すかが上げられる。
写真を見れば分かるように、「八丁神縄林道」では排水施設が大きく破損している。
「八丁神縄林道」の開設工事の効果を評価する神奈川県の「公共事業評価委員会」(小池治委員長)は、2019年11月に「事後評価」をまとめた。
この「事後評価」では林道開設について
「森林整備の直接的効果だけでなく、水源かん養など森林が持つ公益的機能の維持・向上に寄与していること、自然災害に対して速やかな治山事業の実施が図れることなどの副次的効果がみられ、さらに間伐材の利用等による維持管理費の縮減や自然環境への配慮も行われている」
と評価。
台風被害については
「従来の災害想定や適用工法を適宜見直し、自然環境や生態系に十分配慮しつつ、公共インフラのいっそうの強靱化に取り組むことが求められる」
などとした。
この事後評価を受けた神奈川県は「十分な効果の発現が認められた」として事後評価を終了した。
林道の復旧工事について神奈川県森林再生課に問い合わせたところ、2023年度中の完全復旧に向けて工事の発注作業などを行っているという。
また、林道再建工事に当たっては、排水施設の分散や機能改善に取り組むという。
神奈川県が今後、どのような形で林道の「いっそうの強靱化」を図るのか、気になるところではある。
ともあれ、これから急峻な山の現場で復旧工事に当たる作業員の方々には「ご安全に」と祈るほかない。
コメント