【神奈川県山北町議会】一般質問を1年傍聴して見えてきた/主体性欠く町行政と追及力弱き町議会/県内人口減少率最悪の町の実相

山北町情報情報
この記事は約5分で読めます。
スポンサーリンク

2021年4月に神奈川県山北町に移住してもうすぐ1年。
地方新聞で約10年間記者を勤めた筆者は、この1年間に開かれた町議会定例会の一般質問を全て傍聴した。(恐らく職業病)

傍聴を通じて見えてきたのは、自らの町づくりですらどこか〝人ごと〟な姿勢が目立つ町行政と、その姿勢を正すことができない町議会の追及力の低さだった。

神奈川県内の市町村で人口減少率が9%(2020年国勢調査)と最も深刻な山北町内を歩きながら、町行政幹部の答弁を振り返った。

情報収集能力の欠如を棚上げ

JR御殿場線・山北駅の改札を出ると、昭和風情が漂うレトロな駅前商店街が出迎えてくれる。
しかし、どこの地方でも見られる光景と同様に商店街には空き店舗が目立つ。町のメインストリートではあるが、どこか寂しさが漂う。

シャッターを下ろした店が目立つ駅前商店街

そんな商店街を盛り上げようと、毎年夏祭りを開催してきた「山北商店振興会」が2021年6月、高齢化や後継者不足などを理由に解散を決定した。

当然、この話題は町議会の一般質問でも取り上げられた。

「山北商店振興会」の解散について、山崎佐俊・副町長は

「商店振興会が解散するという話は私も町長も知らなかった。解散した後に知った。事前に相談があればいろんなやり方ができたのではないだろうか」と答弁。

また、事業継続を断念した商店主については

「商売を辞める場合(事前に)相談が何もない。いつ辞めるというのは噂や人づてに聞く。商工観光課に相談の門戸は開いている。助成はできるだけのことはしたいと思っているが、結論を先に出されて辞めてしまうとそれ以上できない。相談があってしかるべきではないか」と話した。

この発言からは、大型店の進出や人口減などによる顧客の減少に加えて昨今のコロナ禍の状況に苦しむ商店主に対して「困っているなら相談に来い」といったスタンスに聞こえ、町民の窮状を把握する情報収集能力のなさを棚上げしているようにも感じた。

山崎副町長の発言を商店主はどう受け止めるのか?

今年2月に廃業した商店主は「助成なんてしてくれるの?そんな話は初めて聞いたよ」と目を丸くし、「資金面でもなんでも相談なんか乗ってくれないよ。きっと」と諦めた様子で話した。

他の商店主は「イベントがうまくいけば自分の手柄のようにするのが役場。情報発信は下手だし、何もしてくれない」と切り捨てた。

町議会の一般質問では、このような商店主と町行政との溝を埋めるよう促す質問は聞かれなかった。

山づくりも他力本願?

山北町は町面積の9割が森林という緑豊かな町だ。
湯川裕司町長は議会一般質問で今年7月に行われる予定の町長選に立候補を表明。
4期目の政策として、官民共働による森林の利活用を訴えた。

その中で湯川町長は(森づくりの)基本理念を共有できる自治体、企業、個人の賛同を得ながらやっていきたいと話した。

この答弁で使われた「自治体」という言葉がどうも引っかかる。
山北町も歴とした「自治体」であるにもかかわらず、自らの山の利活用について他の「自治体」の協力を前提とするような発言からはリーダーシップの弱さを感じてしまう。

さらに、答弁の中で湯川町長はこれからの山づくりについて「『チルドレン・フォレスト・オフィサー』ということを考えている」と話した。「チルドレン・フォレスト・オフィサー」とはどういった意味なのか、複数の役場職員に尋ねたが把握していなかった。結局、学校教育課長が湯川町長に確認したところ、森林活動に参加した人に贈られる山北町独自の認証制度ということだった。

質問に立った議員は「チルドレン・フォレスト・オフィサー」の意味を理解していたのか?役場職員も知らない言葉の意味を掘り下げて質すことはなかった。

失敗続きの移住定住対策

山北町は神奈川県内で人口減少率が最も高い自治体だ。にもかかわらず、失敗続きの移住定住対策は漫然と進んでいる。

詳しくは以前の記事↓で紹介した。

要するに、東山北駅周辺の人口を2018年度までに1千人増やそうと立てられた計画が、逆に870人ほど減ってしまったという話。

この計画は現在進行中で予算規模も数億円に上るが、予算のチェック機関である議会からは計画の見直しや是非を問う厳しい質問は聞こえてこなかった。

この町のPDCAサイクルは機能しているのか、甚だ疑問である。

質問回数「ゼロ」は3人

ちなみに、2021年度に開催された議会定例会(計4回)での議員の質問回数をまとめてみた。(下表参照)

当選回数が4、5回のベテラン、熊澤、鈴木、瀬戸(顯)の三氏は一度も質問に立たなかった。

議員名(敬称略、()内は当選回数) 6月 9月 12月 3月 合計質問回数
瀬戸恵津子(5) 4
和田成功(1) 4
清水明(1) 4
堀口恵一(1) 4
冨田陽子(1) 4
瀬戸伸二(1) × 3
遠藤和秀(1) × 3
山崎政司(1) × × 2
府川輝夫(3) × × 2
石田照子(3) × × 2
熊澤友子(4) × × × × 0
鈴木登志子(5) × × × × 0
瀬戸顯弘(4) × × × × 0

(議長の児玉洋一氏は除く)

「議員の仕事は一般質問だけではない」との批判もありそうだが、町行政幹部に対して公の場で質問できる権利を自ら放棄した事実に変わりはない。

これは、今年の3月議会で議員定数を2減する議案を可決するための伏線だったのかもしれない。

終わりに

以上、見てきたように神奈川県内で最も人口減少率が高い山北町では商店街の疲弊を「相談がない」と切り捨て、町面積の9割を占める森林の利活用についても湯川町長の統率力に疑問は残る。さらに町行政を監視する町議会の追及力も甚だ弱い。

町内では今年7月に12年ぶりとなる町長選挙が控えているが、この町の停滞感を打破するような結果となるか。個人的にはあまり期待しないようにしている。

コメント

  1. にゃあ より:

    今年1月に都内から山北町に移住してきた者です。移住に際して、こちらのサイトを参考にさせて頂きました。先ずはお礼を申し上げます。ありがとうございます!

    この記事に書かれていること、私たちも同じ思いです。毎月人口動向を見ていますが、減るばかり。一年間で10%減なんて、たった数年後でもどうなるか!恐ろしいです。税収はダムの固定資産税なんかがあるかもしれませんが、人口が減ると商業施設が撤退するんじゃないかと思うのです。

    移住については、他の市町村も検討したのですが、山北町の移住に対する特典は正直言ってあまり充実していませんでした。また、山北町の認知度も低いと思います。東京の友人は山北町を知らない(丹沢というとわかりますが)ですし、私たちも山北町の土地を譲り受ける話があるまで、山北町を知りませんでした。

    東京へのアクセスが良く、丹沢という素晴らしい自然があるのに、それを活かしきれていないように思うのです。

    移住してきた以上、行政がなんとかしてくれるだろうという受け身ではなく、自分たちでもできることをしなければと思っています。そんな中、ジャーナリストとして現実を発信し問題提起をしてくださること、本当に有り難く思います。

    今後も発信を楽しみにしております!

    • yama-mori-journal より:

      にゃあさん、コメントありがとうございます!
      1月に移住されたんですね!
      このサイトがお役に立てたのであれば大変うれしく思います。
      「書く」ことは孤独な作業なのでこのようなご意見をうかがえて心強いです。
      山北町に住んでいればいずれお会いすることもあるかもしれませんね!
      その際はどうぞよろしくお願いいたします。

タイトルとURLをコピーしました