森林組合の存在や仕事内容は、都市部で暮らしている人ほど目につかないのでは?
10年前に地方に移住した筆者も彼らがどのような仕事をしているのかよく分からないでいた。
最近は森林組合で働く人の話を聞く機会があり、彼らの存在を認識できるようになってきた。そこで、彼らの役割についてザックリと説明する。
「目的」は素晴らしい森林組合法
森林組合の仕事をざっくり言うと「山の管理ができない森林所有者に代わって木の伐採や造林を行う代行業」といった具合だろうか。
1978年に制定された森林組合法には、森林組合の目的について「森林所有者の経済的社会的地位の向上並びに森林の保続培養及び森林生産力の増進を図り、もつて国民経済の発展に資すること」と書いている。
この条文を読む限りでは森林組合はとても社会的に存在意義のある組織だと思える。
ドSなフレーズ
一方でこんなフレーズも。
「行う事業によってその組合員又は会員のために直接の奉仕をすることを旨とすべきであって、営利を目的としてその事業を行ってはならない」(4条)
「営利を目的に事業を行ってはならない」ー!?
森林所有者に代わって過酷な山仕事をさせながらも職員は稼いではいけないということなのか??
というのも、森林組合法が成立したのは今よりも木材価格が高かった時代。このフレーズはその名残なのかもしれない。
※2021年4月施行の改正森林組合法では、上記の4条が「組合は、その事業を行うに当たつては、森林の有する公益的機能の維持増進を図りつつ、林業所得の増大に最大限の配慮をしなければならない」と大きく書き換えられた。
ナンバー2の月収が20万円程度…
先日、ある森林組合の参事を務める男性の話を聞いた。参事とは組合ナンバー2のポストを指す。それなのに彼の月収はなんと22万か23万円というのだ。この男性は仕事にやりがいを感じ、田舎であればこれくらいの手取りで暮らしていけると話していたが、こんな奇特な人は稀ではないか??
ただでさえ林業従事者は少なく、人手不足が続いている状況でこのような現実を見せられたら若者はこの職業を選択するだろうか。森林組合法のドS過ぎるフレーズは、現代社会にどれほど適合しているか疑問に感じる。
法改正で環境改善なるか??
ただ、この森林組合法は改正に向けた手続きが今後進められるという。
改正の中身は、森林組合同士の連携強化や理事に経営部門のプロを据えるなどの案があるらしい。この法改正によって森林組合で働く人の労務環境が改善されればうれしいが、現実はそうも甘くはないだろう。
今の日本の森林政策は戦後に植林したスギやヒノキの「伐期」が来たとして山からどんどん木を切り出すように林業従事者に働きかけている。その代表例が森林経営管理法でもある。森林組合に対して効率化と木材増産を迫るだけであればこの仕事の魅力はますます薄れてしまう。
前述の森林組合参事は、経済成長至上主義の日本において絶滅危惧種のような存在に思える。どうか彼らのような人々が存続できるような法改正がなされるように願ってやまない。
コメント
森林組合法についてですが、ご存知の通り、森林組合は戦後GHQの勧告により協同組合的性格が取り入れられました。そのため、社会的経済的地位の向上といった目的や営利目的の防止や事業の制限などは全て協同組合原則によるものです。したがって、実態はともかく、本来的には協同組合なので、目指すべき方向はそちらです。しかし、ほかの協同組合(生協、農協、漁協など)とは成り立ちも扱う商材も違うのでなかなか他のそれらの組合と同じようにはいかないのが現実でしょうね…
ご意見、ありがとうございます!
大変参考になりました。
今後とも忌憚のないご意見よろしくお願いいたします!