【提案】「森林環境譲与税」をキコリに【斜面危険労働手当】として支給できないか?

林業に関すること コラム 森林政策に関する考察と雑記
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都道府県と市町村が森林の整備や林業の担い手育成などに幅広く使える「森林環境譲与税」という税金がある。

2019年度から全国の自治体に配分が始まったこの税金。2020年度は総額400億円が配分され、2024年度以降の年額は総額600億円に増額される。
現在多くの自治体は、この税金を森林の所有者探し境界画定などの作業に投じている。

だが、この新税の〝効用〟は納税者には見えづらいものになっているのではないだろうか?とも思う。

そこで今回提案するのが、この税金の一部を林業従事者に「斜面危険労働手当」(仮称)として支給することができないか、というもの。

なぜこの手当が必要だと考えたのか、以下、詳しくみていこう。

全産業の中で最も危険。なのに薄給

林野庁によると、林業従事者の平均給与は343万円。全産業の平均値は432万円というから決して高くはなく、むしろ低い部類。

にもかからわらず、労働者1千人当たりの労災事故発生率は20,8人(2019年時)で全産業の中でずば抜けて高いことは以前の記事(自衛官よりも亡くなっている林業従事者)で紹介した。

林業がなぜ、これほど危険なのか。
まだ1年間ではあるが、筆者が林業の現場に身を投じてみて分かってきたことは、作業する場所が主に斜面だからだと思う。

足場の悪い斜面に立ち、高速で刃物が回転するチェーンソーを扱い、重機も操作しなければならない。切り倒す木々の重量は数百キロにもなり、これに激突されれば無事でいられることはまずないだろう。

山村振興のためにも・・・

40年前、日本の林業従事者は約14万6千人いたが、近年では約4万5千人にまで落ち込んでいる。主な要因として木材価格の低迷が挙げられる。

日本の国土のおよそ7割は森林であるため、林業の衰退と山村地域の衰退は切っても切り離せない関係にある。

優秀な林業従事者が増えれば、山村地域も賑やかになるだろうが、危険な上に薄給という現状では優秀な人材を集めることは至難の業と言える。

そこで考えたのが、冒頭で紹介した「斜面危険労働手当」である。

手当の支給額や上限の設定方法など議論の余地はあるが、例として現時点で筆者の頭に思い浮かぶ一つの方法を紹介する。

それは、搬出した木材1立米に対して5千円の手当を支給する、という方法。会社組織であれば、年間に搬出した木材の総立米数を林業従事者数で案分するなどの方法が考えられる。
ただし、過度な森林伐採による自然破壊も懸念されるため、1人当たりの上限を50立米(手当額25万円相当)とする。

仮に、林業従事者全員(4万5千人)に最大25万円の手当を支給したとしても、予算の総額は112億5千万円となり、森林環境譲与税で十分まかなえる金額となる。

「血のコスト」を意識する

このような論を展開すると「原資は税金だろう」といった批判があるかもしれない。
しかし、森林を整備あるいは管理する林業は公共性が高い仕事だと言える。

その裏付けとして、森林所有者に対して森林の管理を「責務」とした森林経営管理法が制定され、納税者1人当たり1千円を負担する森林環境税が生まれた。

先ほど紹介した「斜面危険労働手当」の最大25万円という金額が適切かどうかは分からないが、危険な労働に当たっている林業従事者個人に手当として配分することによって、彼らの仕事が「公共性の高いものだ」という自覚にもつながり、担い手育成の一助にもなるのではないだろうか。

そして納税者も、普段は足を踏み入れることのない山奥で危険と隣り合わせで働いている林業従事者の「血のコスト」を意識することにもつながるのではないだろうか。

「血のコスト」という言葉は、国際政治学者の三浦瑠麗さんが著書「21世紀の戦争と平和」の中で使っている。

三浦さんは同書の中でこんな指摘をしている。

「共同体が必要とするけれども報酬に見合わない危険労働、(中略)こうしたものの存在は、社会の一部を、大多数ないし特定の利益を持つ集団のために犠牲にするという発想に基づいており、社会そのものを危うくする」

森林環境譲与税を活用した「斜面危険労働手当」。
人口減少に苦しむ山間部で優秀な林業従事者を育て、確保するためにも一考の余地はないだろうか?

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