2019年10月、林業の世界を知るため会社の「自己研修制度」というものを利用して休職した。(その後、退職)
同年12月に高知県西部、四万十川が流れる四万十市の「若藤」という集落に移り住み1年3ヶ月、実践を通じて林業の厳しさを学んだ。
この間、会社からの給料はなく、無給状態。
苦しい生活ではあったが、若藤の皆さんに支えられて何とか生き抜くことができた。
お世話になった人たちへの感謝の意味を込めて、研修内容を報告する。
研修を通じて「自伐型林業」の課題も見えてきた。
依頼されたのは田んぼの「影切り」
若藤の位置は下のグーグルマップの通り。
41世帯66人が暮らし、65才以上の割合(高齢化率)は56%。
この地に移住した経緯は以前の記事で触れた。
移住後程なくして、「自伐型林業」について教えを請うたMさん(四万十市在住)の親戚Tさん(若藤在住、80才)から、こんな依頼が転がり込んだ。
「山の木が田んぼの影になる。切ってくれんか?」
Mさんも「やったらいいよ」と勧めてくれた。
伐採を依頼された山がコレ。
確かに、山の影で田んぼの日当たりは悪そうだ。
外観だけだと分かりづらいので、中はこんな感じ。
なかなか竹に浸食されていた。
山の持ち主は県警OBのIさん(65才)。
誰が呼んだかは知らないが、別名を「環境保全型刑事」と言う。
Iさんはスギ・ヒノキだらけの山を、クヌギやナラ、サクラといった紅葉や花見を楽しめる広葉樹に植え替える活動を25年ほど前から地道に続けてきた。
伐採の依頼があったことをIさんに伝えると「全部切ってちょうだい」と快諾してくれた。市役所に「伐採届」を提出し、2020年4月からまずは竹の伐採に取り掛かった。
同月下旬からはMさんの協力で木を搬出するための作業道開設を進め、林内作業車による集材方法も教わった。
もちろん、Mさんには本業の仕事があるため、素人同然の僕が1人で作業する日もあり、かなり危ない思いもした。林業が危険な仕事であることは以前の記事でも触れた。
斜面と木と格闘…
7月、8月は暑さに加えハチなどの害虫が多いため、山の活動はお休み。
Mさんの本業や薪づくりを手伝ったりして過ごした。(もちろん無給)
時間があり、読書もできた。
ただ、自宅にクーラーはなく、あまりに暑すぎるため近くの岩田川で涼を取ったりもした。
そして9月。
再び山との格闘が始まった。
まず竹を切り、木を倒す空間を確保した上で木を伐倒する。
山の下には田んぼがあるため、木をロープで牽引して山側に倒さなければならない。
伐倒する木にロープを結び、斜面上側に取り付けた滑車にロープを通すために斜面を登り、また下りて来て牽引しながら切り倒す。
倒した木を斜面で造材して林内作業車に積み込む。
これも斜面を登って下りて、登って下りて…の繰り返し。
この行程を全て、1人で行う。
倒した木が斜面を滑り落ちたこともたびたびあった。
アブやブヨもたかってくる…。
危険で孤独である。
頭の中にいるもう1人の自分に話しかけ、励まし、斜面と木と格闘した。
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