林業は全産業のなかで労働災害発生率が高いのは有名な話だろうか。
2018年は、労働者1000人当たりに発生した死傷者数は22.4人でトップ。全産業の平均が2.3人だからおよそ10倍で、2位の鉱業(10.7人)を大きく突き放している(林野庁HP参照)。
調べてみると、圧倒的に人数が多い自衛隊員よりも林業従事者の方が多く命を落としていることが分かった。
毎年30~40人が犠牲に…
林災防によると、2019年(10月時点)は既に29人が亡くなっている。2014年には42人が死亡し、毎年40人前後が労災により死亡している。(下表参照)
筆者は、この数字がどれほどの多さなのかを考えるため、危なそうな仕事として自衛隊員の死者数を調べた。
ネット上には統計のようなものは見当たらなかったが、防衛省のページに掲載されている自衛隊殉職隊員追悼式の各年度ごとの「顕彰者数」をまとめた。すると過去6年では2016年度の31人が最も多いことが分かった(下表参照)。国を守るための任務中に失われた尊い命だ。
しかし、死者数でみると林業従事者の方が多く亡くなっていることが分かる。彼らもこの国の国土を保守、保全する役割を持つ林業という仕事で命を落とした人々だ。
さらに注目すべきは労働者数の違いだ。自衛隊は約22万4千人の大部隊なのに対して、林業従事者は約4万5千人(林野庁データ)という規模。それなのに林業の方が死者数が多いといのは驚きだ。
高齢化の問題も
ただ、2018年に死亡した林業従事者31人のうち60歳以上が23人(74%)を占めるという現実もある。労働者の高齢化が死亡事故の誘発につながっているとも考えられる。
ただ、ただ、しかし…。「亡くなったのは高齢者だから仕方ない」とは、筆者は捉えられない。老いも若きも一つの命だ。人手不足が続く林業界にあって、高齢になっても働かざるを得ない状況があり、特に山間部では人口減少と高齢化が進む。
林業と一言で言ってもそのやり方は木材増産に重きを置く大規模なものから小規模なものまでさまざまある。全てのやり方が環境にいいものかは判然とはしないが、これだけ多くの死者を出しながら日々仕事に当たる林業家たち。
畏敬の念に堪えない。
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