「木を切る前に造材を考えろ」と師匠は言う。
立っている木を見上げて曲がり具合や太さを確認し、伐倒後に何メートルごとに切り分けるかを先に考えろ、ということだ。
自伐型林業は、主に山に生えている木の2割ほどしか切らないため、少ない木でどれだけ収益を上げられるかが重要になってくる。
当然ながら、木材は太さと長さで価格が変わる。
例えば仮に長さ24メートルの木を3メートルごとに切り分けるか、4メートルごとに切り分けるかでは木材を出荷した時の価格に差がつく。
だから「太さ(末口)〇センチ、長さ〇メートルの木がいくらになるか」を瞬時に判断するための木材価格表が必要になってくる。
既存の価格表は使いづらい
基本的に各地域ごとに公表されている木材価格表というのは、「太さ〇センチ、長〇メートルの木を1立米出荷した時の価格」という表記のものが多く、使い勝手が悪い。(表1参照)
そこで、表1の情報を基に「太さ〇センチ、長さ〇メートルの木がいくらか」が分かる表を自作しなければならない。エクセルを使って作成すると表2のようになる。
計算式は末口二乗法を使う。
例えば、太さ(末口)20センチ、長さ3メートルのヒノキの材積は、0.2×0.2×3=0.12立米となる。表1を見るとこのサイズのヒノキの1立米の単価は17500円なので、これに0.12を掛けると2100円になることが分かる。
この3メートル材を2本出荷すると4200円になるが、同じ太さで長さ6メートルの材を1本出した場合、6000円の価格になることが表2を見れば分かる。
「造材」のやり方一つで1800円もの差が出てしまう。ちりも積もれば山となるわけで、これを繰り返していては大変な損失になる。
価格表こそ「スマート」に
自分の収益を上げるということは、山主さんへの還元を増やすことにもつながる。
そういう意味でもこの価格表をつくる意味はあるのだが、いちいち計算式をエクセルで入力するのは面倒だし、木材価格が変動したらそれに合わせて数値を変えなければならない。
林野庁などが「スマート林業」をうたうなら、まずは「太さ〇センチ、長さ〇メートルの木がいくらか」が分かる〝スマートな木材価格表〟を作成してくれればいいのに、と思ってしまう。
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