過日、このようなチラシをもらった。炎を背景に金太郎が「理不尽・不条理 強苦(合区)撃退!」と怒り、後ろで熊が泣いている。
どうやら、神奈川県西部に位置する南足柄市と、足柄上郡(山北町、開成町、大井町、松田町、中井町)の議会議員が怒っているらしい。
怒りの理由は、来春に予定される県議会議員選挙の「強制合区」について。
詳しくは神奈川新聞が報じている。
要するに、前回2019年の県議選では人口減少を理由に南足柄市と足柄上郡の選挙区が合区されたのに、来年の県議選では南足柄市と足柄下郡が合区されることに対して怒っているようだ。
この「強制合区」についてはこれまでに足柄上地域1市5町の首長や議会議員らが相次いで反対の立場から要望書を県議会に届け出たが、5月20日の県議会定例会で議員定数条例改正案は可決、成立した。
そこで22日に開かれたのが1市5町の議員有志41人が主催した「南足柄市・足柄下郡の強制合区について考え声を上げる会」だった。
この会合では加藤修平・南足柄市長や、足柄上郡町村会会長の小田眞一・大井町長らが登壇し、南足柄市と足柄上郡は歴史的にも行政的にも一体感が強固であるとの立場から、今回の「強制合区」に疑義を呈した。
加藤市長の口からは県議会の決定について「民主主義の根底を覆す不条理」といった刺激的な言葉も出た。
イマイチな「声明文」
そして会合の最後に「南足柄市・足柄下郡の強制合区反対」の声明文が読み上げられたのだが、この内容がイマイチ。
声明文では、公職選挙法第15条7項にある「選挙区を設ける場合には、行政区画、衆議院議員の選挙区、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならない」との文言を引用して、「法律を遵守すべき県議会が、それを無視したことについても強く抗議し、法律遵守に立ち返るよう求める」と記している。
しかし、今回の合区の根本的な問題は、同法15条2項で定められた「人口割り」である。以下、引用すると
選挙区は、その人口が当該都道府県の人口を当該都道府県の議会の議員の定数をもつて除して得た数(以下この条において「議員一人当たりの人口」という。)の半数以上になるようにしなければならない。この場合において、一の市の区域の人口が議員一人当たりの人口の半数に達しないときは、隣接する他の市町村の区域と合わせて一選挙区を設けるものとする。
つまり、神奈川県民の人口約922万人を県議会議員の定数105で割ると約8万8千人になり、この半数である4万4千人に満たない選挙区は隣接する他の市町村と合区されるという規定。
人口減少が深刻な神奈川県西部のような地方では、この同法15条2項の規定を改正しない限り、今後も「強制合区」は続くことになる。つまり、問題の本質は都市部に人口を密集させる日本の国土利用の現状に対応し切れていない公選法(人口割り)の改正である。
しかし、残念なことに「声明文」ではこのことに触れられておらず、全体の内容としては県議会での条例改正案の採決前に足柄上地域1市5町の首長らが提出した要望書と重複している。
〝無視〟された要望書と同様の声明を出したところでぬかに釘だ。
つまり、「不条理」な強制合区に声を上げる必要性は全く否定しないが、その内容がイマイチ。もっと言ってしまえば、前回2019年の県議選で南足柄市と足柄上郡の合区がなされた時からこの問題は表面化していたはずだ。
問題を先送りして政治・行政を進めてきたツケと言ってもいいだろう。
地方議員であれ「政治家」を名乗るのではれば、今回の会合では公選法改正に必要な具体的なプロセスを示し、いかにして国会議員に働き掛けるかを議論する必要があっただろう。
久しぶりに刺激的な会合だったけれど、内容がイマイチなだけに少し残念。
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