農業、漁業、林業。
どれも日本人の食や国土の保全などを考える上で欠かせない仕事で、その担い手もまた尊い。
コロナ後を考えると、東京一極集中から「地方分散型」の社会に移行し、一次産業を志す人が増えるかもしれない。
そんな中で気がかりなことが一つある。
農業や漁業に関する法律には従事者の【経済的社会的地位の向上】を図ることを目的とする法律があるのに、林業には見当たらないのだ。
正確に言うと、2001年まではそのような法律はあったのに、法改正によってなくなってしまったみたい。
これまでの流れを見てみよう。
法改正で後回しに…
農業の場合は農業協同組合法、漁業の場合は水産業協同組合法 の第1条(目的)に農業者と漁民の経済的社会的地位の向上を図ることが明記されている。
二つの法律には「協同組合法」というタイトルが付いている。
この林業バージョンは森林組合法になるのだけど、この第1条(目的)には「森林所有者の経済的社会的地位の向上」が明記されているだけで、林業従事者については触れられていない…。
もう少し調べてみると、かつてあった「林業基本法」という法律の第1条(目的)と第2条(政策の目標)に「林業従事者の所得を増大してその経済的社会的地位の向上」といった文言があった。
しかし、この法律が2001年に改正されて「森林・林業基本法」に名前を変えるとこれらの文言が法律の「目的」から消え失せてしまう。
百歩ゆずって、第21条には「林業労働に従事する者の福祉の向上」などといった言葉があるが、改正前にはあった法律の「目的」からは外され、大きく後回しにされてしまった。
森林・林業基本法の「目的」は?
では、その「森林・林業基本法」が何を「目的」に定めているかというと、「森林の多面的機能の発揮」ということが下の林野庁資料から分かる。
森林の多面的機能とは、国土の保全や水源涵養、地球温暖化の防止などを指す。これらの機能は、持続可能な社会が求められている現代においても必要不可欠と言える。
ただ、間伐が遅れた森林に分け入ったり、真夏にハチなどの害虫と闘ったりしながら命を懸けて働いているのは紛れもなく林業従事者。
林業がどれだけ危険な仕事かは↓の記事でも触れた。
彼らの「経済的社会的地位の向上」を法律の「目的」から外したのはどのような意図があったのだろうか。そもそも、外す必要があったのかどうか。法改正当時、中学生だった筆者には当時どのような議論があったのかは正直分からない。
また、法改正からおよそ20年がたつが、毎年のように発生している山崩れなどのニュースに触れると、森林の多面的機能の発揮はどこまで進んだのかも不透明だ。
くどいようだが、農民と漁民には【経済的社会的地位の向上】を目的とする法律があるのに、キコリには見当たらない。
そんな中、毎年40人前後のキコリが、森の中で命を落としているというのだからやるせない。
※このブログは、筆者の浅薄な知識で書いているため、万が一林業従事者の【経済的社会的地位の向上】を目的とした法律がある場合はご連絡いただければこの記事は即時削除させていただきます😔
コメント